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インドで7月22日に開かれた20カ国・地域(G20)のエネルギー相会合では、脱炭素化と経済成長の両立などをテーマに議論が交わされたが、ロシアのウクライナ侵略後の先進7カ国(G7)と中露との意見の隔たりは大きく、共同声明のとりまとめには至らなかった。足元のエネルギー安全保障に加え、脱炭素化や水素などの次世代エネルギーの議論の進展も滞っている形で、G20の機能不全は一段と強まっている。
昨年2月以降のウクライナ侵略を非難し、ロシアに対する経済制裁を科すG7とオーストラリア、韓国、対G7でロシアとの連携を強める中国。G7側と中露側の双方と関係を維持するインドなど中立的な国々。G20参加国の立場は大きく3つに分かれている。
G7側はロシアの戦費を絶つため、経済制裁を強化。ロシアからの原油輸入の禁止などを相次いで実施している。ただ、露産原油は、市場価格より割安な価格でインドや中国に流れている。インドのバローダ銀行が5月に発表した調査によると、インドが輸入する原油に占める露産の割合は2021年の2%から22年は19・3%に拡大。中国も露産原油の輸入量を増やしている。G20には、新興5カ国(BRICS)として中露と協力関係のあるブラジルや南アフリカ、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」をロシアとともに主導するサウジアラビアなど中露との関係が深い国も多い。
インフレ対策が重要課題の日米欧のエネルギー消費国は、原油の価格抑制へ産油国に増産を求めているが、サウジはロシアと減産で歩調を合わせている。
脱炭素化でも早期に再生可能エネルギーへの移行を進めたい先進国と、経済成長との両立を重視する新興国の間には温度差がある。
先進国と新興国が結束して世界経済の課題に対応してきたG20だが、閣僚級会合では1年以上共同声明の採択ができない状況が続く。会合終了後の会見で西村康稔経済産業相は「全てがまとまらなかったのは残念」と指摘した。G20の存在意義が問われる事態の解消はまだ見通せない。
筆者:永田岳彦(産経新聞)